この記事の概要
- 保湿剤はどのように肌に作用するのか解説
- 医療用に使用される保湿剤とは何か?
- 保湿剤の効果をさらに高めるための使い方について解説
「カサカサになって白い粉が吹いてくるのが気になる」
「肌がざらついてしまって、化粧のノリが悪い気がする」
など、乾燥肌に伴う肌トラブルに欠かせないのが「保湿剤」です。
ドラッグストアに行くと、たくさんの保湿剤が並んでいますよね。
どの化粧品会社も、単なる「保湿」だけでなく、年代別、男性用・女性用、乳液タイプやさっぱりタイプなどなど、実に幅広い製品が売り出されています。
それほどまでに、お肌の日常のケアにも「保湿」が欠かせないというのは、世の女性の「常識」になっています。
2014年の942名に向けた女性のアンケートでは、「保湿対策のスキンケアを使っていますか?」という質問に対し、「はい」90%(848名)、「いいえ」8%(78名)、「わからない」2%(16名)という結果になりました。90%と圧倒的に多くの人が保湿対策のスキンケアを使っていることが明らかになっており、「保湿」に関する関心は非常に高いものになっています。
しかし、こうした保湿を中心としたスキンケアが、お肌にどう作用しているか知っている人は意外と多くありません。そして、結局どの保湿剤が一番保湿力が高いかを含めて知られていないのが現状です。
今回は、そうしたお肌に対する「保湿剤」について、その原理から医学的に使用される保湿剤は何か、保湿剤の効果をさらに高めるための工夫をふくめて、徹底的に解説していきます。
① 保湿剤はどう肌に作用するのか
「保湿剤」というのは、そもそもなんでしょうか。
広辞苑によると、「一定の湿度に保つこと」とされています。
例えば、水を常温でおいておくと、だんだんなくなっていきますよね。
これを「蒸散」とよびます。水の表面から、気体になる部分が一定の割合ででてくるので、それが水蒸気となって空気中に逃げていってしまうからです。
肌の場合はどうなのでしょうか。実は、肌は、水が容易に逃げないためのある仕組みがあります。それが「角質層」ですね。一番薄い顔の部分でも、15層から20層に折り重なるようにして、直射日光や温度による「蒸散」を防いでいるのです。
保湿剤はこの角質層の「バリア機能」を強化するのが目的です。ではどう強化しているのでしょう。
一番わかりやすいのは、角質層に代わって、表面に膜を覆ってしまう方法ですね。
油脂の膜を覆ってしまえば、水の蒸散を防ぐことにつながり、「保湿」につながることは容易に理解できるでしょう。通称「エモリエント」とも呼びます。
もう1つの方法は、角質層にダイレクトに水分を与えてあげる方法です。具体的には、角質にとどまりやすい成分と水とのつなぐ架け橋のようなものを作って、角質層に水分をとどまらせてしまう方法です。そうすれば、多少水分が「蒸散」によって失われたとしても、全体的な角質にとどまっている水分は増えるはずです。これを「モイスチャライザー」ともよびます。
保湿剤は大きくわけると、この2種類の作用機序で、お肌にうるおいを与えているのです。
② 実際に医学的に効果の高く、使用される保湿剤は何か?
では、「医療用」としての保湿剤として使用されるのは何でしょうか。
代表的なものに「ワセリン」「ヘパリン類似物質」「尿素入り軟膏」などがあげられます。後は、ビタミンE製剤やビタミンA製剤も状態によって使われることがあります。
それぞれについて解説していきましょう。
① ワセリン (白色ワセリン、プロペトなど)
脂の膜で肌を覆って水の蒸散を防ぐ「エモリエント」に該当する製剤です。純度によって眼科用ワセリンであるプロペトなどの製剤があります。
保湿としては、水の蒸散を直接覆って防ぐだけであり、角質の水分量は増やさないため、他の製剤に劣りますが、ワセリンの一番の特徴は、「安価であること」と「低刺激であること」になります。
他の製剤は、肌の角質に入り込んで作用するため、かゆみがでたりする可能性がありますが、特に純度の高いワセリンは、低刺激性であり、従来の保湿剤で肌荒れを起こしやすい方でも、使用することが可能です。また、くちびるや目など皮膚の薄いところにも安心して使うことができます。
また、ワセリンは純度の差はあれ、いわゆる「油」なので、非常に安価なのも特徴です。長期に使い続けていきたい「保湿剤」だからこそ、毎日のメンテナンスはコスパがよいものを選びたいので、その点は心強い味方なのではないでしょうか。
② ヘパリン類似物質
「ヘパリン」とは、血をかたまりにくくする成分のこと。ヘパリン類似物質は、その「ヘパリン」に似た化学構造を持つということで命名されました。
ヒドロキシル基などの親水性の部分と角質にとどまる部分をもっていて、角質にとどまりながら、角質の水分量を直接あげる作用を持っています。
乳液タイプや化粧水タイプ、泡状のタイプやソフト軟膏タイプなど、油分の量によってさまざまな基材がでており、季節や肌の状態、部位によっていろいろ種類を変えることができます。
保湿力は、先ほどのワセリンよりも、直接角質に水分を与える分、高いことも特徴です。しかし、ワセリンよりは一部「かゆみ」としてでてしまう人もいること(血流を上げる作用ももっているので)、ワセリンよりは効果であることがデメリットとしてあげられます。
③ 尿素入り軟膏
同じ「モイスチャライザー」に分類されるものとして「尿素入り軟膏」があげられます。
尿素は、皮膚の水分の蒸発、吸収、保持する作用をつかさどるNMF(天然保湿因子)の主要成分の1つです。
ヘパリン類似物質と同様に、水に馴染みやすい性質を持つため、肌の水分を保ち乾燥を防ぎます。
尿素独自の特徴としては、皮膚表面の角質を作るタンパク質に作用し余分な角質を除く働きもあり、潤いを保つだけではなく、肌をツルツルにする作用も併せ持っています。
ですので、かかとやひじなど角質の多い部分での保湿に非常に向いている製剤になります。
③ 保湿剤の効果をさらに高めるための使い方は?
このように、保湿剤にもいろいろ種類があり、医学的にもこれらの製剤を使い合わせて、肌のバリアを整えることが重要視されています。
では、こうした保湿剤は実際にどう使っていけばよいのでしょうか。順に解説していきましょう。
まず塗り方です。
「しわの方向にそって」「横方向に使用すること」が基本になります。
なぜなら、塗り残しがないようにすることと、縦に伸ばすと、どこまでもぬれてしまい、薄く塗ってしまいやすくなるからです。
ちょうど膜をはるように、こすって塗らないようにしましょう。
「こする」という行為が炎症を引き起こしてしまうからです。
次に量です。一般的に、人差し指の一番外側の節までにのせた量を 1 finger-tip-unit(FTU)といいます。これが基本単位で、この量が大人の手の平2枚分の範囲で塗るとちょうどいい量といわれています。目安としては、若干光る程度で、ティッシュペーパーが塗ったあとに、かるく付着するくらいがちょうどいいとされています。
最後にいつ塗るかです。一番保湿力が低下しているのは、お風呂上りですね。お風呂で一番水分がとられてしまうからです。1日1回しか塗れないなら、お風呂上りがおすすめです。
他には、朝もおすすめ。もちろん、いつ塗り足しても身体に害はありません。
こうしたことを守っていくだけで、保湿剤の効果をさらに高めてくれるでしょう。
④ 結局、どの保湿剤をつかったらいいの?
さて、このようにお肌の強い味方である保湿剤ですが、最近非常に多くの種類が販売されていて、どれがよいのか非常に難しいですよね。また、なかなか医療機関に時間がとれなくて受診できない方も多いと思います。
試しにこの記事で紹介した保湿剤を使ってみてください。
- ワセリン…ピジョンワセリン
- ヘパリン類似物質…カルテヒルドイド クリーム
ローション
- 尿素入り軟膏…ケラチナミンコーワクリーム
ご家庭でのお肌のケア。しっかりしていきたいですよね。
ぜひ保湿をしっかりして、よりきれいにお肌にしていきましょう!